こんばんは!
バレンタインは体調不良で作文とか製作関係はことごとく挫折した今年でした(´・ω・`)
ホワイトデーもあるよって声も聞こえますが、イベントに合わせた作文がまた出来れば良いなと・・・思っております。

そんなこんなでチマチマ書いていたお話。
馬岱さんを久しぶりに絡めてみたかった、という通常運転の趙備話です。
お暇潰しにでもなってくれましたら幸いです~

拍手、コメント下さいましてありがとうございます!!
有難いお言葉を沢山戴きまして、こういうふうに好き勝手書いていても楽しんで下さる方がいらっしゃって下さる幸せと言うものを噛みしめております。
これからもマイペースにやらせて頂きますので、なにとぞ良しなに!!!

では本文へどうぞ♥ 

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貴方と君への願い事

 

 

 

外から、誰かが戻ってきたようだ。

愛馬の世話をしていた馬岱が厩の出入り口の方へ目を向けると、郊外へ視察に出ていた劉備と、彼の供をしていた趙雲がそれぞれ手綱を引いて歩いてくる。

和やかな様子で話しながら厩に入ってきた劉備に、馬岱が明るい声を投げ掛けた。

「劉備殿、趙雲殿、お疲れ様でしたー!」

呼びかけられた二人は穏やかな表情で小さく手を上げる。

「ああ馬岱、今日は此処にいたのか?」

「ええ、諸葛亮殿からの仕事が終わったんで、ちょっとさぼってコイツと遊んでたんです」

そう言いながら自らの愛馬の鼻筋を撫でる馬岱に、劉備がにっこり笑った。

「そなたはいつも忙しそうにしているのだ、これくらいをさぼりなどと言う者はいないだろう」

劉備の言葉に、趙雲も目を細めて頷いている。

「はい。そしてこれだけ主人から大事にされて、馬岱殿の馬も喜んでおりましょう」

二人からの温かい言葉に、馬岱の顔がくしゃりと嬉しそうな笑顔になった。

「ありがとうございます!お優しい二人からそんな風に言われたら、ちょっと舞い上がっちゃいそうですよ」

愛馬へも己の喜びを共有させるように、その首筋に両腕を巻き付ける馬岱を見て、劉備が朗らかな笑い声を上げる。

「ははは、喜んでもらえたのならば私も嬉しい」

楽しそうにしている劉備へ、趙雲がそっと手を差し出す。

「殿、手綱を」

「ああ、ありがとう子龍」

劉備の愛馬の手綱を受渡しする主従の様子を眺めて、馬岱は口元を緩め小首を傾げた。

「殿の愛馬は、すっかり趙雲殿にも慣れているようですね?」

忠臣の誘導に大人しく従っている己の愛馬を振り返り見て、劉備はうん、と素直に頷く。

「子龍が馬の扱いに長けているからな、どんな馬でも良く言う事を聞くようだ」

劉備の言葉に、柵を閉じながら趙雲が慌てて否と声を出した。

「いいえ殿、そこまで私は器用ではありません!」

おやと劉備は顎に指先を当てる。

「そうか?子龍にかかると私の馬は主以上に素直になるのだが・・・」

「劉備殿、劉備殿っ」

呼びかけられて、声を出した人物へ顔を向けると、馬岱が笑顔で手招きをしていた。

その笑顔がなにやら悪戯気な様子なのだが、劉備にはその理由が分からないまま相手の元へ近寄る。

「どうしたのだ?」

「すみません、もしかしたらご存じかも知れないんですけれど・・・馬って主人と通じる所が多いと思いません?」

「?ああ、そんな話を聞いたことはあるな」

劉備は、馬岱が急に語り始めた馬の話に首を傾げた。

西涼出身の彼は、馬の扱いに長けていて、彼らとの付き合い方も熟知している。

そんな馬岱からの馬の話は聞いていて面白いが、なぜいまこんな話を始めたのかが劉備には分からない。

不思議そうな顔をしながらこちらを見つめる劉備に、馬岱は笑みながら手をひらりと振って見せた。

「主人と通じてるってことは、自分の主人が好きなモノも、逆に嫌いなモノだって分かるって事です。劉備殿の愛馬だって、きっと殿のお好きなモノをちゃんと知っているんじゃないかなって・・・」

劉備が振り返り、己の愛馬の鼻筋を優しく撫でている趙雲を眺める。

「と、いうことは・・・」

「殿の愛馬、趙雲殿にすっかり懐いているように俺には見えますけれど?」

「っ!」

楽しそうに後ろから小声でそう告げられた劉備の耳が、一瞬で赤くなった。

自分が伝えたかった事に漸く気付いた相手を楽しそうに見つめながら、馬岱は柵に肩肘を預けて穏やかに語り掛ける。

「趙雲殿は確かに器用な方です。でも器用なのと人同士の好き嫌いはまた別の話。馬はそんな人同士の関係をしっかり見ているもんですよ、殿」

「そ・・・そうか」

思わぬところから自分の気持ちを馬岱に見透かされ、赤くなる頬を隠すように手を添える劉備に気付いたらしい、趙雲が此方に歩み寄ってきた。

「殿?・・・馬岱殿、どうされたのですか?」

何を話していたのかと首を傾げる趙雲に、馬岱は笑顔で一つ頷く。

「仲が良いって良いもんですよねって。俺も楽しくなってきますよ、趙雲殿」

はあ、と置いてけぼりにされたような声を出す趙雲の顔を隣で見上げた劉備が、その声の響きに思わず笑い出す。

「子龍、なんだその声は」

劉備の笑顔に、ちょっと困ったような表情で趙雲は頭を掻いた。

「その、お二人が何をお話になっていたのか分からなくて・・・どう返事をして良いものかと」

馬岱もそんな忠臣の困惑を朗らかな笑い声で和らげようとする。

「あははは・・・趙雲殿、いまはね『勿論ですっ!』て胸を張って返して下されば良いんですよー!」

にこにこしている馬岱と、顔を赤くしてこちらを見つめている劉備を交互に眺めて、趙雲はひとつ頷いて口元に笑みを浮かべた。

「ええ。馬岱殿、勿論です。劉備殿は大切な大切な御方ですよ」

「し、子龍!」

こちらの会話を全部を把握しきれていないはずなのに、完璧な様子で惚気て見せた趙雲に、劉備はびっくりして目を丸くし、馬岱は顔に手を当てて空を仰ぐ。

「あちゃあ、俺の完敗ですね。さすが趙雲殿」

大きな動作で当てられた、と照れる馬岱を可笑しげに見ながら、趙雲は腰に手を当てて肩を竦めた。

「殿のご様子を見れば分かります。いくら馬岱殿でも、あまりからかわないでくださいね?」

大事な人を困らせないでくれと釘を刺す趙雲に、馬岱がふと悪戯気な笑みを見せる。

「すみません、気を付けますっ・・・でも、あんまりにもお二人がお似合いだから、羨ましくってついつい口が出ちゃうんですよねぇ、ふふふ」

そう言いながら飼葉桶を手に厩を出て行った馬岱を二人は暫く黙って見送っていたが、劉備はそっと趙雲の精悍な横顔を見上げた。

馬岱と趙雲の話に、後半は半ば置いてけぼりにされながらも、劉備は隣にいる忠臣が珍しく思い切った言動をした事に対していまだに驚きが消えない。

趙雲の平素は、殆どこういったからかいの類に対して、さらりと綺麗に受け流して無難に収めることが多いというのに、と考えていると、己が見つめている横顔がこちらを向いて微笑を浮かべた。

「全く・・・馬岱殿は褒めるのも上手な方です、劉備殿をからかった事を怒りそびれてしまいました」

穏やかな声で意外な本心を聞いた劉備が、慌てて首を振って趙雲を宥める素振りを見せる。

「私のことなど良いのだ。馬岱も悪気があっての言葉ではないだろうから、そなたが怒る事はない」

しかし、趙雲は片眉を上げて少し不満げに鼻を鳴らした。

「殿が宜しくとも、私が良くありません」

「うん?そんなに馬岱が好き放題言っていたようには聞こえなかったが」

顎に手を当て、相手がなぜそこまで馬岱を咎めようとしているのかが分からず悩む劉備を、趙雲は小さく笑って手袋を外す。

「実は、大変な嫉妬をいたしまして」

「??」

ふわりと、劉備の頬に大きな手が添えられた。

「貴方と、馬岱殿が並んで私を眺めていらした時です」

馬を柵に入れて振り返った時に目にした、恥ずかしそうな劉備と楽しげな馬岱の並びに、趙雲は小さな嫉妬を覚えたのだ、と静かに告白する。

頬を愛おしげに撫でる大きな手の温みを感じながら、劉備は不思議そうに瞬きをした。

「嫉妬?なにゆえ子龍が、そのように」

澄んだ瞳に引き寄せられる様に、趙雲は身体を屈める。

「劉備殿が恥ずかしそうにされる可憐なお姿は、私以外の何者にも見せたくなかったというのに。あの時の貴方の愛おしさを、彼に見られてしまいました」

お互いの鼻先が触れ合うのではないかと思うくらいの近距離で告げられた言葉に、劉備の顔がみるみる赤くなった。

「て、照れるくらいはいつでもあるではないか・・・っ」

「嫌です。そのようなお顔は、今後私だけのものに」

間近に真摯な表情で伝えられる相手の願いを、劉備は戸惑った様子で首を傾げる。

「・・・私は、子龍の事を一番に好いている。しかし、この言葉だけではそなたは不足か?」

「いいえ、殿のお言葉に何の不満がございましょう。私の懸念は、貴方が他の者へその様なお顔を間近でなされること・・・」

そこまで言うと、趙雲は劉備を強く引き寄せた。

いきなりの強い口づけに、劉備は抵抗する暇もなく相手の腕の中に捕らわれる。

「ん・・・ふっ・・・」

息継ぎもままならないような口づけに翻弄され、流石の劉備も相手の厚い胸板を叩いて抗議の意思を伝えるが、彼はそんな抵抗などに構わない様子で、むしろますます深い口づけを続けた。

相手の熱が伝わって、唇が紅を付けたように赤く染まるころ、ようやく抱擁の力が弱まる。

目元を潤ませて力が抜けたように相手に縋り付きながら、劉備は趙雲を軽く睨んだ。

「・・・子龍、いきなり何をするのだ」

睨まれても、趙雲は目を細めて微笑している。

「貴方のそんなご様子から、皆がこうして劉備殿に心を奪われてしまう恐れがございますゆえ、どうかご注意を」

「っ、そんなことは今まで無かったぞ!」

「いいえ、ございます」

劉備の赤く染まった頬を一撫でして、趙雲は優しく抱き締めた。

「私が、貴方の可憐なご様子に囚われたのですから。他に居ないなどとは断言できませぬ」

可憐だの、愛おしいだのと相手から酷く甘い言葉を告げられて、劉備は恥ずかしさからそれ以上の抗議の言葉が思いつかず、趙雲の腕の中で、その温もりに身を任せているしか出来ない。

そんな相手の艶やかな黒髪に軽い口づけを落として、趙雲は小さく笑う。

「醜い独占欲とお笑いになるでしょう。しかし、こればかりは隠せぬ気持ちなのです、劉備殿」

懺悔にも似た響きのこの言葉に、劉備の胸がどきりと鳴った。

何時だったか、己も彼の告白に通じる思いを感じた事があった、と思い出す。

それは他の者と気軽に語らい、朗らかに笑う彼の姿を遠目に見た時の、劉備の心によぎった思いだ。

あの笑顔を、笑い声を、己一人のモノに出来たなら。

我に返ってそんな望みを持った自分に気付き、慌ててそれを振り払った己の心中は、きっと今の彼と同じだったのだろう。

誰かを一番に好きになるという事は、誰よりもその人の一番近くに居たいと願う事でもある。

「子龍を、笑う事など出来ぬ」

己の腕の中で、静かな声が響いた。

その落ち着いた響きに、己の告白から相手が動揺していない事を悟った趙雲は腕の力を緩める。

「私はさっき、子龍が一番に好きだと告げた。それはきっと、そなたが独占欲と語ったそれと同じなのだ」

趙雲の腕の中から、劉備が真っ直ぐに相手の顔を見上げていた。

彼の大きく澄んだ瞳の中に、己の顔が映っている。

「子龍。共に同じ気持ちならば、笑う事も咎める事も出来ないだろう?」

愛おしい人からの穏やかな言葉に、趙雲の目元がふんわりと赤く染まった。

「劉備殿・・・」

口元に指先を添えて、劉備がくすくすと軽やかに笑っている。

「ふふ、少し驚いたが、嫉妬するそなたも好きだ」

「っ!そ、そのような」

劉備からの思わぬ告白に、趙雲は驚いて口籠り、目が泳いだ。

そんな相手を優しく見つめ、劉備は改めて相手の胸元に手を添え、口を開いた。

「私だって、そなたの周りに居る者に対して羨む気持ちを抱く事がある。これだって十分、独占欲ではないか?」

「・・・殿が・・・私に??」

こちらの話に、信じられないといったような表情をした趙雲に、劉備が少し呆れた様な顔をする。

「子龍はまだ、そのような言い方をするのか?これほど一緒に居るというのに」

相手を困らせたと気付いた趙雲は、慌てて首を振って劉備のせいでは無いのだと弁解の声を出した。

「あっ、いえ、違うのです!・・・やはりまだ、私は劉備殿からその様にお話頂ける自信が無くて」

「・・・勿体ないことを言うのだな。そなたは、出会った時から私には十分すぎる男だというのに」

劉備からの賛辞も、趙雲は素直に喜ぶことをしないで神妙な顔をして頭を垂れるだけである。

「・・・・・畏れ入ります、ですが」

「子龍」

趙雲は自分への戒めを口に出そうとしたが、相手の人差し指がこちらの唇を抑えてしまった。

人差し指を当てたまま、劉備が優しく笑い掛けてくる。

「子龍、今日はもう、そのように己へ厳しいことを言うのは止めよう。私はそなたの強さも、優しさも、厳しさも、甘さも、全部が好きなのだ。たとえ子龍自身に不足を感じる所があったとしても、私はそんなところだって好いている。だからな、あんまり難しい顔をして自分を追い込まないで欲しい」

唇から指を離し、両手で趙雲の頬を包み込むと、劉備の目が愛おしげに細められた。

「そなた以上に不足だらけの私を、これだけ大事にしてくれる子龍のように、私にもそなたの不足を愛させてくれないか?」

どうだ、と問われるように首を傾げて笑んでいる劉備を、趙雲は僅かに口を開いたまま、顔を真っ赤にさせて凝視している。

「殿・・・」

「ああ、でも子龍。あんまりしょっちゅう周りの者にやっかんではいけないぞ?その度にあんな口づけをされては、私が参ってしまうから・・・ふふ」

「!?も、申し訳ありませ、」

「違う違う、私がそなたから益々離れられなくなる、という事だ」

口元に笑みを残したまま、劉備が背伸びをして趙雲の唇へ自らの唇を寄せた。

「それで良いか?子龍」

愛おしい人の背を支え、自ら相手の背丈に合せるように身を屈めて、趙雲がはいと甘い声で囁く。

「劉備殿から頂くお気持ち以上に、私は貴方を愛して行くと誓いましょう。どうか、ずっとお傍に」

お互いの答えは知っているとでも言うように、もう一度口づけを交わす。

一方、察しの良すぎる馬岱は、厩のすぐ近くにある飼葉置き場の小屋から戻れず暇を持て余している。

あの二人が厩を出てくるまでどうにもならない、と彼は苦笑しながら、薄雲の張った穏やかな春空を見上げて幸せそうだねぇ、などと独りぼやいていた。

 

 

 

(終わり)

 

 

 

馬岱さんを久しぶりに登場させたかったお話です。

馬岱さんは嫌味の無い物言いが出来そうなので、サラッとカップルを上手い事茶化して遊んでいそうな人のイメージがあります。

しかしちょっと、ウチの趙雲は劉備殿に一途すぎて怖いくらいですみませんです()

そんな趙雲の一途さを、劉備は年上の余裕で包んで愛してあげてくれていたら良いなと、私が。