こんにちは!
梅雨入りのニュースが聞こえて来る時期です、皆様いかがお過ごしでしょうか?
湿気が多すぎるのは困る事が多いので、ううんって感じですが、この時期があるから梅雨明けが楽しみにもなる、というので取り敢えず頑張っています。

今回は趙劉で。相変わらずなお話です。
将星モードで文鴦くんが蜀に居る、という設定での作文となっております。
文鴦好きなのです、純粋そうな感じが良いなと。
劉備と趙雲がベタベタしておりますので、カップリング苦手な方はご注意くださいませ。


※いつも拍手、コメントで応援下さいましてありがとうございます!!
自分で妄想している馬良さんを褒めて頂けるなんて思っておりませんでしたので、本当に嬉しくて♡
これからも趙劉と共に馬良さん(孔×良)推して行きますので宜しくお付き合い頂ければ幸いです!
もっと読みやすくて綺麗な作文を目指して頑張ります、重ねてありがとうございます!!!

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シークレット・シークレット <趙劉・将星モード創作>

 

 

 

昼食時間が過ぎた広い食堂はやけにがらんとしていて、今は誰にも気を遣わなくて良いはずの状態なのに、そこで独り遅い昼食を取る若者はなぜか肩身の狭そうな様子で忙しげに匙を動かしている。

昼時間の多忙を終え、ようやく休憩という頃に、遅い昼食を求めてやってきた若者を見た食堂係はちょっと迷惑そうな顔をしたが、残り物で良いならとわざわざ温かい物を作って彼に出してくれた。

「皿は洗い場に出しておいてくれれば良いさ」

そう係の男は言い残してさっさと昼寝場所に引っ込んでしまったが、若者は有難うと爽やかに感謝の言葉を投げ掛けて食堂の片隅で独りの食事を始めたのである。

しん、と静まり返った昼下がりの食堂には、若者が使う匙と皿が触れ合う音しか響いていない。

これはこれで食べにくいものだ、と彼が独りで苦笑いを浮かべていると、食堂の出入り口に人影が見えた。

「おや・・・文鴦(ぶんおう)ではないか?」

意外そうな相手の声を聞いて、文鴦は驚いて席から立ち上がる。

「へ、陛下!?」

「独りでこのような時間に昼飯か?」

蜀漢国の皇帝、劉備玄徳が首を傾げながら文鴦に歩み寄ってくる。

「は、はいっ、午前中の作業が手間取ってしまいまして・・・」

匙を握りしめたままで一生懸命こちらの質問に答える若者の様子に、劉備がくすくすと笑いだした。

「そうか、それは大変だっただろう。だがなぁ文鴦、そこまで肩肘張らずとも良いのだが」

口の端に胡麻粒が付いている、と笑いながら指摘された文鴦は、顔を赤くして慌てて口元を拭う。

「すみません、お見苦しい所をお見せしてしまって」

長身の若者を見上げて、劉備は穏やかに首を振って見せた。

「良いのだ。私の方こそ食事中に声を掛けてすまなかったな」

「いいえ、そのような。しかし陛下、なぜこちらに?」

一国の皇帝陛下が一般兵の集うような食堂に顔を出すなど、文鴦は聞いたことが無い。

しかも皆が昼寝をしているような時間帯に、と問う若者に、劉備は彼に食事の続きを促しながら近くの椅子に腰かけた。

「部屋の湯が無くなったので、ここで茶を淹れようと思ったのだ。そんな事で休んでいる皆を起こすのも悪くてな、こっそりと」

「こっそり?」

出入り口の方をちらりと振り返り見ながら、劉備は悪戯気に目を光らせる。

「ああ、心配性の誰かさんにこのような所を見つかっては、茶を淹れるのも危ないと言って茶葉にも触らせてくれないだろうから」

誰かさんとは諸葛亮殿の事だろうか、と文鴦は劉備の語る人物を予想してみた。

確かにいつも、飄々としながらも劉備の事を気遣っている素振りが随所に見られる人物である。

そんな諸葛亮を始めとした臣下たちは、主の為に働く事こそが己の仕事だ。

主君の手足となり、頭脳となって働ける事こそが幸せだと、皆思っている。

それを主自ら些末な物事にまで手を出されてしまっては、臣下としては困りものだという事も文鴦には分かっているので、行動的な主君に頭を痛める家臣たちの心情の方が気持ちとしては良く分かる。

急いで皿の上の食事を平らげた文鴦は軽く首を振った。

「その方の仰る事は尤もでしょう。陛下自らが動かれなくても、私たちが代わりに出来る事は沢山あります」

一言断りを入れて、文鴦が立ち上がる。

食器を片付けに行く若者の背を見ながら、劉備が苦笑いを浮かべた。

「ううん、そう言ってくれる気遣いは嬉しいのだが・・・私だって茶くらい淹れたい時はあるのだぞ?」

蜀へ来たばかりの頃は、身近な細かい事まで自分でやってしまおうとする劉備の言動に驚いてばかりの文鴦だったが、今はだいぶん慣れて来たので、愚痴る主君へ彼なりの気遣いを添えられるようになってきている。

「ははは、もし陛下がそう仰って茶を淹れて下さったならば、皆たいへん勿体無がって手を付けられません。ゆえにお止めしているのかもしれませんよ」

食器を綺麗に洗い終え、劉備の元に戻ってきた文鴦の手に、茶器が一対携えられている。

「では今は、私がお淹れ致しましょう。お待ち頂けますでしょうか?」

若者の提案に、劉備の顔がぱっと輝いた。

「おお、文鴦が淹れてくれるのか?初めてだな、楽しみだ!」

期待と喜びで嬉しそうに目尻を下げる劉備の様子に、文鴦の心がほんわりと温かくなって自然と笑みが零れる。

「若輩者ですから至らぬ所は多いと思いますが・・・」

「ふふ、そのような謙遜は要らないぞ。そなたなら大丈夫だ」

「え?」

「似ているからな」

「ええ??」

誰に、と聞きたい素振りを見せても、劉備はにこにこと人懐こい笑みを浮かべているばかりで何も応えてくれない。

首を傾げながら文鴦が湯を用意し、手慣れた様子で茶を淹れる様子を、劉備は穏やかに見つめていた。

急須の蓋を閉め、上から更に熱湯を注ぎ掛けたとき、劉備がふと口を開く。

「以前・・・もうだいぶん前、私の前でこうして茶を淹れてくれた者を、そなたの手付きを見ていると思い出すな」

「あの・・・似ている、と?」

うん、と劉備は頬杖をついたまま頷いた。

「私とその者が出会って、まだ日が浅い頃だ。その青年は私の知人に仕えていたのだが、不思議と気が合ってな。暇があれば良くこうして茶を淹れながら語り合っていたものだと」

懐かしそうに目を細めて語る劉備の話を聞きながら、文鴦は心中で首を傾げる。

自分が先程予想していた人物とは違うようだ。

劉備と諸葛亮の出会いは有名で、文鴦のような若者でも耳にしたことがある。

いつもより丁寧に淹れた茶を、美味いと微笑みながら飲んでくれる劉備を見つめながら、三顧の礼、とは全く違う、彼が語る昔話に出て来ている青年とは、誰の事かと文鴦が改めて相手の周囲に控える家臣団の面々を思い浮かべていると、食堂内に凛、と鋭い声が響いた。

「劉備殿!」

一瞬目を丸くした後で、劉備が文鴦に小声で見つかってしまった、と言って悪戯が見つかった子供の様な表情で小さく笑む。

文鴦がびっくりして出入り口へ目を向けると、口元を引き結んだ趙雲が早足にこちらに向かって来ている所であった。

「寝所にいらっしゃらないのでお探ししました。如何なされたのですか?」

趙雲に身体を向けて、劉備が眉を下げる。

「すまぬ、子龍。部屋の湯が無くなっていたので、湯を貰いに来ていたのだ」

「それくらいならばお付きの者か私にお申し付けください、急にお姿が見えなくなると皆が心配いたします。・・・文鴦はどうしたのだ?」

珍しい趙雲からの静かな威圧に、文鴦は僅かにたじろぎつつ遅い昼食の理由を手短に告げた。

そうか、と相手は素っ気なく文鴦に声を返すと、劉備に向かって手を差し出す。

「戻りましょう。湯は直ぐに持って来させます」

差し出された手を取らず、劉備は趙雲に向かって手招きをした。

「湯はもういいのだ、いまほど文鴦から茶を淹れて貰ったから。そなたも一緒にどうだ?」

「殿・・・」

硬い声を出す趙雲に構わず、主は彼の手を取ってそっと引き寄せる。

「まだ休憩時間だろう?文鴦から茶を淹れて貰うなど滅多に無いのに、飲まないのは勿体無い」

そう言って、劉備は文鴦へ目配せをした。

若者はその仕草から我に返り、慌ててもう一客を取りに食器置き場へ向かう。

「さあ、子龍」

自分の背後で相手をやんわりと宥めるような劉備の声を聞きつつ、いつもは穏やかな趙雲が、今は片眉を上げて面白くなさそうな表情をしている理由が分からない文鴦は、きっと劉備の不在のせいだったのだろうと思い込むことにした。

若者は、直感でそう己の心に決めつけないといけないような気がしている。

趙雲の分の茶器も急ぎ準備して二人の元に戻ると、意外な光景に思わず道具を取り落しそうになった。

「劉備殿・・・心配いたしました」

劉備と間近に向かい合わせに座った趙雲が、相手の顔の両脇に垂らした髪の一房を手に取り、優しく指で梳いていたのだ。

「・・・子龍・・・」

髪を梳かれている劉備は、顔から首まで赤くして俯いてしまっている。

趙雲は趙雲で、文鴦が見た事も無いような優しい表情で劉備を見つめていた。

「貴方様が行きたいと仰る所はどこへでもお連れ致しますし、お供いたします。危険な場所以外はお止め致しませんのに、なにゆえお独りで行かれてしまうのですか?」

「・・・すまない・・・ほんの少しの時間だからと、思って・・・」

髪を梳いていた趙雲の指が、劉備の頬にそっと触れる。

「それは、もしや気づまりなのでは?私が、貴方様を束縛してしまっているせいでしょうか?」

小さな溜息交じりの趙雲の言葉に、劉備が驚いて顔を上げた。

「そんなことは無い!子龍が傍に居てくれるのは私にとっての幸いでしかないぞ!!」

そう言って劉備は趙雲の手を取る。

「だから、そのような顔をしないで欲しい。また二人で景色の良い所に連れて行ってくれぬか?」

趙雲も劉備の手を握り返し、ほっとした様子で微笑んだ。

「ええ、劉備殿のご希望でしたら喜んで叶えてみせましょう」

「ありがとう、子龍」

「お任せください、劉備殿」

二人で笑み合っていると、その傍らでことり、と何かが落ちる音がした。

音のした方へ目を遣ると、文鴦が真っ赤な顔をして固まっている。

劉備たちの視線に気付いた若者は、慌てて手から滑り落ちた急須の蓋を取り上げるが、動きがぎこちない。

「ああ、これは・・・」

文鴦の赤面の理由に気付いた劉備が頬に手を当てて気恥ずかしげな様子を見せるものだから、若者は急いで繕い言葉を探す。

「その、申し訳ありませんっ、お邪魔を・・・」

「構わない、文鴦」

惑う手で茶葉入れを取ろうとした文鴦へ、趙雲が緩やかに手を振って動作を遮った。

「折角の機会だが、やはり私たちはもう戻らなくては。また時間を作るから、その時に頼めるか?」

眉を下げて申し訳なさそうな声を出した趙雲に、文鴦は場を和ませようと、朗らかに笑んで首を振る。

「いいえ、私の方こそお引止めしてしまったようで申し訳ありませんでした。次の機会を楽しみにしております」

「すまないな。お前が殿のお相手をしてくれたお蔭で助かったぞ。万が一お独りの時に火傷などされては、騒ぎになっていただろうから」

いつもの微笑を浮かべてくれた趙雲に、文鴦が内心安堵していると、趙雲の隣で劉備が不満そうな声を上げた。

「子龍・・・!また私を子供扱いして!」

小さく膨れる主に苦笑いを見せて、彼は劉備が飲み残した茶を一息で飲み空ける。

そして文鴦へひとつ頷くと、劉備の背に手を添えた。

「私へのご不満はお部屋で伺いましょう。さあ、皆の休憩が終わる前にお部屋へ」

趙雲に促され渋々立ち上がった劉備は、文鴦へ少し気恥ずかしそうに笑い掛ける。

「文鴦、そなたの茶は美味かったぞ。ありがとう」

穏やかな感謝の言葉に、文鴦の頬に嬉しげな朱が上った。

「ありがとうございます!このような未熟者に有難いお言葉を」

若者らしい元気のある拱手に、劉備は笑いながらその手を軽く撫でると、趙雲と共に食堂を出ていく。

二人の後ろ姿が見えなくなるまで見送った文鴦は、ふと劉備と趙雲の出会いの話を聞いたことが無かったと気付いて、仲の良い主従に思いを馳せつつ独り首を傾げていた。

 

強く手を握られたまま、早足で先を歩く趙雲に引っ張られるようにして部屋に入った劉備は、そのまま相手に抱き締められて身動きが取れなくなった。

それだけ相手に心配を掛けたのだろうと劉備は申し訳なく感じて、趙雲の背中に腕を回す。

「子龍、すまなかった。随分と探させてしまっただろうか?」

きゅ、と劉備の身体を両腕で抱き締めながら、趙雲が小さな声で相手を呼んだ。

「・・・劉備殿」

「うん」

「申し訳ありませんでした」

趙雲の腕の中で劉備は首を傾げる。

「??子龍が何を謝るのだ?」

「文鴦の前で、あのような事を」

間近に顔を近付け、優しく己の髪を梳いていた趙雲の仕草を思い出し、劉備の胸が一つ、鳴った。

「・・・あ・・・しかし、文鴦は気にしていなかったようだし・・・大丈夫」

「つい、あれに意地悪をしてみたくなりました」

思いもよらない趙雲の告白に、劉備の目が丸くなる。

「え?」

「劉備殿は、私の大切な方ゆえ手出ししないように釘を刺しておこうと思いまして」

あの一瞬の甘さは、文鴦への当て付けだと知った劉備は驚いて趙雲の顔を見上げた。

「へ?・・・て、手出し!?文鴦がそのような事を思う筈もないだろう!」

狼狽しながら胸元から己を見上げる相手の目を趙雲は真っ直ぐに見つめ返して、否と首を振る。

「断言などできません。人の気持ちに絶対など無いことは、劉備殿の方が良くご存じの筈」

趙雲の言いたい事は良く分かる。

だが、やはり文鴦がそのような感情を自分に持つなど有り得ないと思っている劉備は、彼を擁護しようと他の理由を探した。

「う・・・だが、あれは随分と若い。文鴦には年相応の、だな・・・」

「私も貴方とは年齢に差がございます」

「・・・・・・・」

片眉をあげてしれっと反論された劉備は、言葉に詰まった。

困った顔でこちらを見つめる劉備を、言葉でやり込めてしまったと申し訳なさそうに趙雲がその頬を優しく撫でる。

「私自身が、貴方にこれだけの恋をするなど思いもしなかったのです。ですから、怖かったのかも知れません」

「怖かった?」

「文鴦が貴方に茶を淹れている姿が、ふと」

昔の己に重なったのだ、と趙雲は語った。

二人だけで茶を楽しみ、のんびりと語り合っていたあの頃が趙雲の脳裏に蘇る。

恋を知らなかった己が、客人である劉備の姿を何故だか気になって目で追っていた頃。

その気持ちが、嬉しそうに茶を淹れている今の文鴦にもあるのではと思った途端、彼は堪らない気持ちになっていた。

「劉備殿のお気持ちを疑っているのではありません。私は、昔の私自身がもう一人現れる事を恐れているのです」

頬を撫でる相手の手をそっと取って、劉備は少し言葉を探す。

「・・・文鴦はな、子龍」

俯き加減で、言葉を選びながらゆっくりと趙雲へ言い聞かせるように劉備が語る。

「晋ではそなたに並ぶ程の強者、と謳われていたそうだ。晋国の趙雲だと。だが、あれは文鴦・・・文淑次騫(ぶんしゅく・じけん)という者、蜀の趙雲子龍ではない」

劉備の言葉に、趙雲がはっと目を見開いた。

手をやわやわと握りながら、劉備は相手の整った顔立ちへ優しく笑い掛ける。

「あの頃、私に優しい風味の茶を淹れてくれた若者は、目の前にいまも居てくれているではないか。恐れる事など何一つ無い。私の大切な子龍はずっと変わらず、此処に」

劉備にも文鴦の姿は出会ったばかりの頃の趙雲と重なったが、淹れてくれた茶の味は全く違っていた事を知っている。

自分より背の高い趙雲の頭に手を伸ばして、ぽふぽふと髪を軽く撫でつけると相手は罰の悪そうな表情を見せた。

「大変嬉しいお言葉なのですが、その、これは少々・・・」

「ふふ、偶には私にも年上らしいことをさせてくれ。それにそなた以外の他の者にこんなことをするとへの字口になる者がいるゆえ、な?」

からかうような口調で趙雲にそう言うと、彼の顔がさっと赤くなる。

「っ、当然です!誰にでもこの様な事をされますと、それこそあちこちで誤解が生まれます!!」

「ううん・・・そうなのか?これぐらい、とは思うのだがなあ・・・」

釈然としない顔で首を捻った劉備を、趙雲が片眉を上げて強く引き寄せた。

「そんな事をまだ仰るようでしたら、お説教致しますよ?」

綺麗な顔が真顔になると、妙な迫力が生まれる。

耳の痛くなるような話は勘弁して欲しい、と劉備は愛想笑いをして彼の腕の中から逃げ出そうとするが、こういう時の生真面目な忠臣はびくともしない。

「分かったから!軽率な真似はしないから!離せ、子龍っ」

「何回、そのお言葉を私が聞いたかお答えになれますか?・・・ああ、いえ、お答えしなくて結構です」

「こら、しりゅ、・・・んんっ!」

はじめは趙雲からの強引な口づけでも、結局は劉備も自ら相手の首に腕を回して、お互いの思慕を分け合う結果になるのはいつものことだ。

甘い口づけをゆっくりと交わした後は、先程の痴話喧嘩などすっかり無かったことになっており、劉備は目元をふんわり染めて趙雲に甘えるように顔を寄せる。

「もう、休憩は終わりだろうか・・・?」

抱き締めている趙雲の手が、劉備の背中や肩を愛撫するように優しく撫でるので、小さく息が上がり始めた。

目を潤ませている愛しい人を優しい眼差しで見つめ、趙雲は頭を振って掠れ声でいいえと答える。

「劉備殿・・・お時間は、もう少し」

目を細めて、劉備が笑みながら囁いた。

「ならば、子龍・・・」

二人は、先程よりも熱の上がったお互いを、言葉で伝えあう時間すら惜しむように、とびきり甘く深い口づけを交わし始める。

ぱっと火が付いた熱情はどちらからも消せるはずが無く、休憩時間が終わるまで劉備と趙雲が部屋から出て来る事はなかった。

 

趙雲殿、何やってるんですかぁ。

純粋で真っ直ぐな瞳をこちらに向けてくる若者に、馬岱はいつもの笑いを浮かべながら内心で毒を吐いている。

「へええ、殿と趙雲殿が、ねえ・・・」

「はい!とても仲がよろしいご様子で。私の方がちょっと照れてしまいましたけれど、素敵でした」

「ははは・・・あのお二人は理想的な主従関係だからねえ、美人さん同士だし・・・」

乾いた笑いを添えながら話に合わせてやると、文鴦は目を輝かせて大きく頷いた。

「ですよね!!とても幸せな気持ちになりましたよ」

「あー、でも文鴦殿、この話は俺にだけにしておいた方が良いと思うよ?」

さり気無く釘をさすと、若者はきょとんとして首を傾げた。

「え?そうなのですか??皆様ご存じのお話では・・・」

馬岱の笑顔が思わず引き攣る。

「んー・・・どう言えば良いかな、公然のヒミツっていうモノが世の中にはあって・・・」

「???」

「じゃあ関羽殿と張飛殿、文鴦殿は会ったことがある?」

後で趙雲殿へチクリと言っておこう、と馬岱は心に強く決めている。

その前に、目の前の若者に昼間の出来事を口止めさせる為の上手い言い訳を必死に頭の中で探している西涼の苦労人であった。

 

 

 

 

(終わり)

 

 

 

以前、文鴦くんを混ぜ込んだ作文をしたことがありましたが、今回は趙雲からみた劉備と文鴦くんで、まあ・・・例のごとくまた痴話喧嘩です(笑)

嫉妬、という感情は恐れや不安から起こるものなのかな、と考えていて、趙雲の場合もそうなのかな、劉備に対しては特に敏感になるのかなと。繊細そうな方なので。

文鴦くんは平素だとちょっとポアッとしている子でイメージしています。

趙雲は全てに憧れ、劉備は人柄を尊敬、といった気持ちが大きいかなと。

馬岱さんにはごめん、ごめんと謝りながらオチ付けさせてもらいました。

お付き合い下さってありがとうございました!!