こんにちは!
もっさり過ごしていたら6月が終わりました・・・色々やっていたつもりなのですが。
苦手な夏が一日一日と近づいて来ておりますがそこそこ元気なメンタルで過ごせております。

ええと、今回の作文は片思い馬良さんの設定で書いています。
孔良カップリング要素が苦手な方はお気を付けください。
本当は分けずに上げる予定でしたが、長くなりそうなので2回に分けて上げることにしました。
題名の真意は、後半アップ時にお話出来ればと思っております~。
お暇潰しにとお付き合い頂けたら、この上なく嬉しいです。


毎回、拍手やコメントなどの反応を下さいましてありがとうございます!!
いつも有難く拝見しております.。゚+.(・∀・)゚+.゚
なかなか誤字脱字が直らない作文ばかりですが、それでも楽しんで下さっている、という優しいお言葉を頂くと、自分の不足にめげずに頑張ろうと思えます。
いつも温かい応援、重ねて御礼申し上げます(ぺこり)
リクエストなどございましたら常時受け付けておりますので、お気軽にお声掛け頂けたら嬉しいです♪
これからもお時間のある時にお付き合い頂けましたら幸いです!!


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The future attraction

 

 

1.

 

馬良殿から馬良に、そして季常殿から季常へと相手が自分に対する呼び掛けが変わって行くのに時間はあまり掛からなかった。

そんなこちらも相手に合せるように軍師様から諸葛亮様、孔明様から義兄上へと親密度の高い呼び掛けに変わっている。

馬家では長子の自分が、誰かに対してあにうえ、などと呼び掛ける日が来るなど思わなかったと彼は独りで小さく笑った。

そして、義兄上と呼び掛けながら、心の中では義兄弟以上の思慕を抱え続ける、罪悪感にも似た気持ちまで知る事になろうとは。

それもこれも不思議な魅力を持つ主に出会ったからだと改めて思う。

優しい君主なのだ。優しすぎて、時にこちらが心配になるくらいに周りの者達を大事にし過ぎてしまう。

強い君主を求める者にとって、一見すると彼のその大きな優しさは酷く頼りなくて、ひ弱な人物に見えかねない危うさがあった。

だから、助けたくなるのだといつかの義兄は笑っていた。

「あの方が得意な事と、私が得意な事はそれぞれ違います。だからこそ此方はお手伝いのし甲斐があるのですよ」

その時に、自分はなんと返したのだったか。

気の利いた言葉の一つでも言えていたら良いのだが、今の彼には当時の詳細な会話を思い出せなかった。

「季常がぼんやりしているとは珍しい」

穏やかな声が馬良の思考を遮る。

はっと我に返って声を出した相手へ顔を向けると、諸葛亮が入口の辺りでにこやかに笑みながら佇んでいた。

馬良が小さく驚きの声を上げて椅子から立ち上がる。

「義兄上。どうなったのでしょう?」

「少し、貴方に相談したい事が出来まして。宜しいですか」

勿論、と馬良は微笑んでみせた。

「今までぼんやりしていたわたくしが、義兄上のお話を聞けない程忙しそうに見えますか?」

椅子を勧められながら、諸葛亮は改めて馬良の仕事部屋をさっと見渡す。

彼自身は忙しさを見せないが、机の上の書簡の山を見ればその仕事量は自然と分かるものだ。

この仕事量を独りでこなしているのか、と諸葛亮は僅かに眉間の皺を深くする。

「季常、私の話の前に。そろそろ手伝いを付けてはどうでしょう。貴方一人で処理できる量には見えませんが」

卓の上に茶碗を二つ置いた馬良は、穏やかな様子のままゆるりと首を振った。

「お仕事の手伝いは要りません。今まで通り、仕上げた書簡をそれぞれの方へ運んでくれる者が居るだけでわたくしは充分です」

それに、と馬良は小さく肩を竦める。

「お恥ずかしい位に机の上は乱雑ですけれど、どのお仕事がどこに置いてあるのか、分かるのはわたくしだけなのです。他の方の手が入ってしまうとお仕事の順番がみな狂ってしまいますから・・・」

馬良はそういって恥ずかしそうに目線を落とすが、彼の机上は書簡が内容ごとにきちんとそれぞれの籠へ分けられ、整然と並べられているようにしか見えない。

ただ、その籠ごとの書簡の山々の高さがやけに高いのだ。

馬良が椅子に座ると、その山々に囲まれて見えなくなるのでは、と心配になる程に。

机上の書簡たちを厳しい目付きで見つめる諸葛亮に気付いた馬良が、慌てて言葉を添えた。

「ああ、ここにあるお仕事は、全てわたくしが処理する訳では無いのです。間違えてこちらに持ち込まれている案件もございますから、あの、どうかそのようなお顔はなさらないでくださいませ」

気後れしたような馬良の声に、諸葛亮は驚いたように瞬きをする。

「おや、妙な顔をしていましたか、私は」

義兄からの不思議な問い掛けに、馬良の口元が思わず緩んだ。

「ええ、お仕事の山が憎らしいとでも仰りたそうなお顔を・・・ふふ」

袖で口元を隠して笑う義弟に、諸葛亮も困ったように小さく笑む。

「それはいけませんね。仕事に対して私情を入れるなと、いつも口うるさい私自身がこのようでは」

「いいえ、義兄上からのお気遣い、本当に嬉しいです。ありがとうございます」

たおやかに頭を垂れる馬良へ、諸葛亮は手を差し出した。

「私の方こそ、頼りにさせて貰っているのです。義理とはいえ兄弟なのですから、そのような言葉は要りませんよ」

季常、と優しく呼びかけられて、白眉は漸く頭を上げる。

そして差し出された義兄の手を見つめて、小さく笑った。

「兄弟。ええ、確かに」

きょうだい、と繰り返した馬良の気持ちに諸葛亮は気付く事は無く、差し出した手を隣の椅子へ向け、相手を促しながら彼は義弟へ語り掛ける。

「貴方が政務の一端を担ってくれているのは蜀の皆にとっても、私にとっても大変な幸いです。ですが無理をしてはいけませんよ?良いですね??」

慈しみのこもった言葉に、椅子に腰かけた馬良は目を細めてはいと頷いた。

「義兄上も、わたくしへの心配以上にご自分を大切になさってくださいませね?このところ益々お忙しそうですから」

こちらへ穏やかな気遣いを返す馬良を、諸葛亮は優しく見つめて頷く。

「ええ。ですから今日はこちらに来たのです」

義兄の言葉の意味をくみ取りきれない馬良は首を傾げた。

「?そういえば、ご相談があるとか先程仰っていましたけれど・・・」

「相談がある、というのは口実ですよ。頭の痛い問題ばかりで、流石に少し気晴らしをしたくなりまして」

そういって悪戯気に笑う彼を、白眉は嬉しいような苦しいような、表現しがたい心持ちで笑みを浮かべるしか出来ない。

「まあ、左様でしたか・・・ですがわたくしで気晴らしになりましょうか?他にもたくさん、楽しいお話をしてくださる方はいらっしゃいますけれども」

公の場では私的な感情を抑え、飄々とした様子で物事を進める諸葛亮が、自分の前では緩やかにおどけて見せてくれるのは馬良にとっても嬉しい事だ。

だが、それは自分にだけ見せているのでは無いことも分かっている。

それに彼がもっと穏やかに自身を表し、寛げる場所を他にちゃんと持っているから、己は素直に喜べないのだと馬良は冷静に今の心持ちを分析して内心で溜息をついた。

義弟の謙遜に、諸葛亮が否と首を振る。

「楽しい話も良いのですが、場合によっては語るよりも大切な事があります」

そこまで言ってこちらの目を静かに見つめる諸葛亮へ、馬良は白眉を下げて僅かに肩を竦めた。

その大切な事とは何か、と問うことすら勿体ない類の答えなのだろうと察している仕草だった。

「不粋な事を申しましたね、わたくしは」

あっさりとした口調でそう言うと、相手は目を逸らして椅子から立ち上がろうとする。

いつもならばそこまで語ると、自分の所へわざわざ来てくれて嬉しい、と無邪気に喜ぶのに、今日の馬良は瞬間瞬間にほんの僅かな寂しさが見え隠れしているように感じた諸葛亮は咄嗟に、季常、と離れそうになる相手を引き留めるようにその手を掴んだ。

手を取られた馬良は小さく驚いた表情を見せるが、振り払う事もせずに諸葛亮の手を見つめる。

「まあ、これは・・・義兄上?」

いつも通りのふわふわとした問いに、何故か珍しく相手が一瞬言葉を探した。

微かな違和感を口に出すことを、諸葛亮はためらったのだ。

「・・・そのように、貴方が謝る事はないのですよ」

咄嗟に口にした相手の言葉を聞いた馬良は、くすくすと軽やかな笑い声を漏らす。

「成程、わざわざお気遣いくださったのですね。ありがとうございます」

だが、その明るい笑い声は今のこの場に対しどこか不似合いな響きをしているように感じて、諸葛亮は軽く眉間に皺を寄せた。

「なぜ、此処で貴方は笑うのですか?」

袖で口元を隠したまま、馬良はさてと首を傾げる。

「深い理由などございません。強いて申し上げるのでしたら、義兄上のお優しさが嬉しかったから、でしょうか」

ご不快でしたか、と逆に問われた諸葛亮は、己が抱いた違和感を口に出さないまま静かにいいえ、と返した。

「私の我儘に忙しい貴方を付き合わせているのではないか、と心配になったのです」

掴まれている手を馬良は軽く握り返して、義兄の名を呼ぶ。

「孔明様。この蜀で一番にお忙しいのは貴方様です。わたくしの事など些末なもの、そうやってご自身で心配事を増やさないでくださいませ」

馬良の言葉に、諸葛亮の目元が厳しさを含んだ。

「己を些末なもの、などと言ってはいけません季常。貴方は」

「承知しております。わたくしは自分を貶めるつもりでお話しているのではありません。ただ、義兄上があまりにもわたくしにお気を遣ってくださることが申し訳なかったのです。わたくしよりも、もっと心配する方がいらっしゃるのではと思いまして」

諸葛亮の言葉にすいと割り込んで馬良は自分の語りたいことを伝えると、握られていた手をするりと外す。

「お口を湿らせるものもご用意しないままで、申し訳ありません。只今お茶を淹れましょう」

にこりと口元に笑みを浮かべてから此方に背を向けた義弟を、諸葛亮は黙って見つめた。

 


(続く)