こんにちは!
お久しぶりの更新となりました。

先日、ωフォースの20周年ライブに行ってくることが出来ました!
ライブ自体もとても素晴らしくて心底楽しんで来たのですが、ライブの最後の最後に発表された無双OROCHI3の話にいまだに夢見心地です・・・!

OROCHIと言えば仙界。
仙界と言えば黎霞ちゃん・・・来るんじゃないの!?!と英傑伝大好きな私はテンション上がりまして。
今回は英傑伝のメイントリオでのお話です。
ぼんやり日常な話ですが、趙劉要素が入っております。

お暇潰しにでもなりましたら幸いです~



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風が吹いた日

 

 

 

春の始まりの頃、穏やかな日差しの下、他愛のない話をしながら街道沿いをゆったりと歩く三人組がいる。

一人は鎧姿で槍を片手にしている若武者、もう一人は腰に二丁の銃を差して片眼鏡を掛けている若者、そしてあと一人は、なんとも不思議な女人だった。

彼女は桃色の髪を独特に結い上げた髪型で、まだ肌を出すには寒い時期なのに腕や腰回りの肌が見える装いをしており、更には地に足をつける事無くふわふわと宙に浮きながら移動しているように見える。

通常の人間だったら有り得ない移動方法だが、すれ違う旅人たちは何故か彼女に奇異な視線を向ける事は無く、淡々とすれ違い、遠ざかってゆく。

林を抜けて次の町まであと少し、という辺りで片眼鏡の若者が羽織っていた外套を脱ぎ、うんと伸びをした。

「やっと春らしい気候になってきた」

「ああ、こうして歩くのも楽になってきたな」

鎧姿の若者がそう返して微笑むと、浮遊しながら傍らを付いてくる仙女が肩を竦める。

「人間て面倒なのね。ちょっとの温度変化で暑い寒いって騒ぐのだから」

まるで自分には関係の無い話だ、と語る彼女を片眼鏡の若者は苦笑しながら見つめた。

「俺たちだって、黎霞さんみたいに気候気温に関係の無い服装で過ごせたら楽なんですけれど、何故か神様がそうしてくれなかったんですよね」

そう言った後で、でも、と彼は続ける。

「むしろ暑い寒いが分かるからこそ、楽しめることも沢山あったりしますから、面倒な事ばかりでも無いですよ。な、子龍?」

親友から話を振られて、趙雲は槍を担ぎ直しながら、うんと春空を見上げた。

「確かにそうだな。冬の寒さは辛いものだが、その辛さを知っているから今のように春の温かさが一層嬉しくも感じられる」

夏の暑さもしかり、と話す趙雲と、彼に同意するように頷く雷斌を眺めて、黎霞は鼻を鳴らす。

「ふうん・・・人間て今でも前向きに生きているのね」

「はは、人間のそういうところは昔から変わらないですかね?」

雷斌の問いに黎霞は少し、何かを思い返すような目つきをして、微笑した。

「ええ、そうね。その前向きさがあるからこそ、今でもこうして続いているのかも知れないわ」

穏やかな春風に桃色の髪を揺らして笑む彼女を見て、趙雲と雷斌は深々と頷く。

「黎霞殿がそう言うと実に重みがあるな」

「ああ、これこそが歴史の生き証人、てやつだ。いや凄いよ」

大真面目にそう語る二人を、黎霞は片眉を上げて当然と言いたげな声を出した。

「なによ今更。その生き証人を叩き起こした責任を取って貰いに、こうして旅をしてるのですからね?」

この旅の始まりを作った当人である雷斌が、その言葉に頭を掻きながら眉を下げた。

「あ、はい・・・」

黎霞に頭の上がらない様子の親友を、趙雲が笑い飛ばす。

「ははは、そう小さくなるな師伯。始まりはどうあれ、お前のお蔭で様々な人物と出会えてもいる、私にとっては悪くない旅だぞ」

助け舟を出して貰った雷斌は、途端に顔を輝かせて嗚呼と明るい声を上げた。

「流石は子龍!持つべきものは友、とはよく言ったもんだ。俺も、お前の役に立てたのなら嬉しいよ」

親友の溌剌とした笑顔に、趙雲も頷きで応えてやる。

「勿論だ、いつも助けてくれているではないか」

自分が口にした感謝の意味合いが、相手に上手く伝わっていない事に気付いた雷斌は、前髪を掻き上げて緩く首を振った。

「ああ、いや。そうじゃなくて、子龍」

「?何が違う」

まだ自分の言いたい事が分からない相手に対し、雷斌は胸を張って腰に手を当て、人差し指を立てて指先をくるりと回して見せる。

「この旅で、子龍にとってとびきりの人物と出会えたって事が、俺は嬉しいって言ってるんだよ」

生真面目な顔で雷斌の話を聞いていた趙雲は、とびきりの人物、という言葉を耳にした途端、くすぐったそうな表情に変わる。

「ああ・・・うむ、そうだな」

言葉を濁して、趙雲は来た道を振り返った。

その彼の背中を、雷斌と黎霞が見つめる。

これ以上からかうような気にはなれない、そんな背中に見えて、雷斌は少し言葉を探す。

「・・・気掛かりか?」

別れ際の、親友が見せた名残惜しそうな様子を思い出して、雷斌が静かに問うた。

道の向こうを見つめたまま、否と落ち着いた声で趙雲は返す。

「関羽殿と張飛殿がご一緒なのだ、大事は無いだろう」

そう言って次の行き先へ身体を向け直した趙雲へ、黎霞が不思議そうな声を出した。

「大丈夫、と言いつつ何だか元気が無いわね。何て言うのかしら・・・そう、寂しいの?」

真顔で趙雲に核心を問う仙女に、雷斌が慌てて言葉を挟む。

「ちょ、黎霞さん!そんな直球を!?」

雷斌が慌てる理由が分からない黎霞は、訝しそうな表情で首を傾げた。

「直球?なにを慌てているの雷斌?」

「あのですね、敢えて言わなくても良い事って言うのが人間同士にはあってですね・・・」

「?落ち着きなさい、言葉遣いがおかしくなってるわよ」

「そりゃあおかしくもなりますよっ、誰のせいだと思ってるんですか!!」

自分をよそに、傍らで繰り広げられる仙女と親友のやり取りを聞いていた趙雲は暫く驚いた表情をしていたが、二人の噛み合わないやり取りに、思わずふっと小さく吹き出した。

「あ・・・子龍?」

くすくすと笑う親友に気付いた雷斌が気遣うような声を出すと、彼は笑みを口元に残して頷く。

「黎霞殿の言う通りだ。確かに、劉備殿と別れてしまって寂しいな」

「子龍・・・」

ざわざわと遠くで風に揺れる木々へ目を遣りながら、趙雲は眉を下げた。

「また、お会いしようと誓ってあの方と別れたがこの情勢だ・・・寂しさは勿論だが次は、いつ何処で再会できるかも分からないという不安も、ある」

自分達がいる辺りも風が強くなってきたらしい、趙雲の束ねた長い後ろ髪が風に弄ばれている様子が雷斌の目に映る。

その様子がまさに劉備に対して後ろ髪を引かれているようで、雷斌は改めて親友の心情を思う。

「子龍・・・お前、あそこに残っていても良かったんだぞ?黎霞さんのことは、俺が」

「師伯」

己を気遣う親友の言葉を遮って、趙雲は凛と相手を見つめた。

「お前の優しさは有難い。だが、それとこれとは別だ。今の私がやらねばならぬのは、お前と黎霞殿で散らばった玉を探し出す事。やるべき事をやり遂げることが出来なければ、私は劉備殿の元へ再び参じる資格は無いと思っている。それに」

趙雲は雷斌と黎霞を交互に見つめて、目を細める。

「私にも、お前と黎霞殿の手伝いを、最後までやらせてくれ」

親友の真摯な言葉に、雷斌の表情が心配そうな様子から小さな喜びを含んだ笑みへと変わった。

「お前って奴は・・・」

そこまで言いかけて、雷斌は頭を掻きながら足元へ目を落とす。

雷斌の仕草は、照れくさい時に良く見せるそれなのだと分かっている趙雲は何も言わず穏やかに彼を見つめた。

「知ってるわ、貴方みたいな人を馬鹿真面目って言うのでしょう?」

二人のそんな空気を遮るように、黎霞が冷静な声を出した。

ああっと雷斌が情けない声を上げて頭を抱える。

「黎霞さんっ!ここ、凄く良いとこだったんですけど・・・!!」

抗議の声を上げる雷斌を淡々と眺めながら、黎霞は腕組みして首を傾げた。

「あら、そうなの?悪かったわね。でもこんな所でのんびりしている暇は無さそうよ・・・ほら」

黎霞の動きに合わせて空を見上げた趙雲は、小さく声を上げる。

「成程、雨が降ってきそうだな」

草原の向こうから、雨を抱えた黒い雲が近づいて来ている様子が見えた。

黒雲を確認して大きなため息をつきながら、雷斌も手にした外套を持ち直す。

「はぁ、急に風が強くなったのはこれのせいか・・・」

先に歩き出した趙雲が、後ろの雷斌へ呼び掛けた。

「師伯、次の町までどれくらいだ?」

趙雲の早足についてゆこうと小走りになりながら、相手の問いに雷斌が嗚呼と応える。

「さっきすれ違った商人からこの丘を越えれば町が見える、と教えて貰った。そんなに遠くない筈だ」

「ならば急ごう。濡れずに済むのならば、それが一番だ」

黎霞がふわりと高く浮き上がって、二人よりも先に丘の向こうを見遣る。

「町が見えたわ。確かに遠くはないけれど、ゆっくり歩いてもいられない距離ね」

仙女の助言を聞いて、趙雲と雷斌は顔を見合わせた。

「走るか?」

「ああ。だけど本気で走るなよ、子龍。お前が本気になると俺が付いて行けなくなるからな」

そう言って白い歯を見せた親友に、趙雲は気恥ずかしそうな笑顔を見せる。

「すまん、加減する」

息を合わせたかのように同時に二人は砂埃を上げて駆け出した。

二人の速度に合わせて、黎霞も滑るように宙を走る。

趙雲を真中に、三人で町へ向かう道を駆けながら、暫くして雷斌が親友の名を呼んだ。

「なぁ子龍」

「どうした」

呼び掛けられて、趙雲が相手を横目でみると、彼は軽く息を上げながら真っ直ぐに前を見つめている。

「必ず、お前は劉備殿に再会できるさ」

思いがけない言葉に、趙雲の走る速度が僅かに落ちた。

「師伯・・・」

雷斌が、趙雲へ顔を向け笑顔で力強く頷く。

「もちろん、俺も手伝うよ。なんたって子龍には初志貫徹、って言葉が一番似合うからな!」

二人の言葉を聞いていた黎霞があらと声を上げた。

「また、志の話?」

そうですよ、と趙雲を挟んで雷斌が黎霞に返す。

「志はとても奥の深い話なんです!本当は此処でいちから話したいんですけど・・・っ」

慌てて息継ぎをした雷斌の代わりに、趙雲が苦笑いしながら言葉を繋いだ。

「止めておけ。走りながら語らせたら、師伯の息が切れてしまう」

片手を上げて同意を表した雷斌を、黎霞が笑う。

「雷斌は忙しいのね。町についてからゆっくり話しなさい」

目的地である町の門が、徐々に近付いてくる。

三人は速度を緩め、なんとか雨に打たれずに済みそうだと安堵の息をついた。

趙雲は雷斌と黎霞に挟まれながら、暗くなってきている空をもう一度見上げたが、後ろを振り返ることはしない。

寂しい、という半ば自分勝手な気持ちを、ただ穏やかに共有してくれた二人の優しさに応えたいと彼は思う。

そして自分の遂げるべき目的と成長の為に、と温かな笑顔で送り出してくれたあの御方の心遣いを無駄にするまいと、趙雲は真っ直ぐに前を向いて、新たな地へと一歩、踏み出した。

 

 

 

(おしまい)

 

 

 

 

英傑伝のトリオで作文でした。

先日、OROCHI3の発表が出たので雷斌と黎霞ちゃんの参戦くるかな!?とワクワクし始めたら作文したくなりまして。

劉備と一度お別れした趙雲は最初、心の中では向かい風が吹いている気持ちだったかもしれません。

でも雷斌と黎霞が居てくれる英傑伝の世界では、この二人のお蔭で追い風に乗って新しい出会いに向かって行けるような関係だったら良いなと思いながら書いてみました。